2014年5月22日木曜日

Low Head Penguin Tour 2008年12月22日

朝、腕時計のアラームで目を覚ました。いつも寝過ごすのを防止するためにアラームをかけるようにしている。一日走って、ビールを飲んで寝るとテントが明るくなっても目を覚まさないことがあるのだ。

よく寝たな。
昨夜は10時過ぎには眠ってしまったのではないだろうか。

タスマニアの車のナンバープレート 絶滅したとされるタスマニアデビルが描かれている



いつも通り朝の支度をする。
キャンプ場は昨日より人が多いように感じた。タスマニアのキャンプ場はオフィスが五時には閉まってしまうのだが、その後で来る人も多いようだ。

いつもより少し準備に時間がかかった。

昨日のオランダ人サイクリストの夫婦はまだ起きたところのようだ。今日はここに滞在するのかもしれない。



ブリッドポートから走り出す。
道は概ね平坦。空には少し雲が多いが、風は弱い追い風。なかなかいいペースだ。

ハイウェイの周囲にはブドウ畑が広がる。このあたりはワイナリーが多く、ハイウェイにはブドウのマークの標識に”WINE ROUTE”と書いてある。

どこかで土産にワインを買いたいなと走っていると、"DELMERE"というおしゃれな看板のワイナリーがハイウェイ沿いにあったので立ち寄る。



ワイナリーのカウンターには綺麗な女性がひとり。もちろんカウンターの上にはワインが並んでいた。







「試飲してみる?どれがいい?」

私が図々しく「全部試したいな。」と言うと、
「いいわ!」と言って、順番に説明しながら出してくれた。




私が日本から来たというと、昔福岡にいたことがある、と言っていた。
前にもNZでそんなことを言っていた女性がいたっけな。



私は甘めのロゼのスパークリングワインを土産用に一本購入した。
荷物が随分重たくなるが、この前のアンティークショップの土産や、最初にホバートで買ったジャムもあることだし、そろそろ一度荷物を日本に送ればいいだろう。





Pipers riverの街でジェネラルストアに立ち寄るが、店員の感じが悪かった。
腹が減ってきたが、食事ができそうな店もないので、
昨日スーパーで買ったビスケットをかじってしのぐ。

次のGeorge Townは大きい街なようなので、そこまで我慢しよう。


NZを旅したときに一時行動を共にしたマレーシア人サイクリストが
ある峠の上でビスケットを分けてくれたことを思い出した。
彼はいつか北海道に行きたいと言っていた。元気だろうか。



道は相変わらずのアップダウン。ほんとにタスマニアはすごいな。
日本のアップダウンは比較的小さいのが続く感じが多いが、
こちらは一つ一つのアップダウンが長い上、その斜度がケタ違いだ。

アップダウンのあとはフラットになる。
意外とよく走ることができた。


ジョージタウンに入る。

ジョージタウンはタスマニア北部の都市Launcestonからバス海峡へ向かって広がる
Tamar Valleyという大きな谷の東海岸に位置する街だ。

タスマニアは北部に街が多い。

南部は州都ホバートがあるものの、
西側は道さえないところもある手つかずの自然が残るエリアだ。
そのあたりは旅の後半に行くことになる。



インフォメーションセンターで道を確認。
空腹なので、その足でカフェに入る。




カフェはそこそこ客が入っていて、なかなかオーダーを取りに来てくれなかった。

ようやくオーダーを取りに来た女性にカウンターの裏の黒板の一番上に書かれていた「Chicken Schnit Zel Berger」とchipsのsmall、それからMoccaccinoを注文した。


バーガーはサクサクチキンのフィレをメインに、パイン、パプリカ、トマト、レタスが入っていた。ちょっと変わり種な感じがしたが、なかなか美味しかった。


食事を済ませ、モカッチーノを飲みながら日記を書く。
ここのラジオの選局はいい。
ジャニス・ジョプリンの「Me and Bobby Mcgee」が聴こえてきた。


さあ、土産を送りにポストオフィスに行こう。


ポストオフィスで荷物を梱包する。
今日買ったワインに、セントヘレンズのアンティークショップで購入したコーヒーカップ、
ホバートのサマランカマーケットで手に入れたジャムとラベンダー柄の豆皿などを
段ボールに詰めた。

船便で100ドル。
私の帰国より後に届くだろう。

帰国後、届いた荷物をほどくと
残念ながら、豆皿とコーヒーカップの2枚あるソーサーの1枚が割れていた。

日本に送ったコーヒーカップ。このソーサーの下にもう一枚ソーサーがついていた。


ポストオフィスを出て、出発しようとすると
自転車に乗った少年が勢いよく近づいてきて「この自転車乗ってるの?」と聞いてきた。
「そうだよ。キャンプしながら旅をしているんだ」私が答えると満足したのか、
少年は来た時の勢いでそのままどこかに行ってしまった。


ときどきこういうことがあるんだよな。
なんだか、野良犬みたいで笑えた。


今日の宿泊予定であるLow Headは小さな街のようなので念のため、ビールを買った。

タスマニア産のカスケードペールエール。
この旅で飲んだ中ではうまいビールだ。


ビールを買う頃、雨が降り出してきて
雨の中、走るのはまだしもテントを張るのは気が重いなと思いながら
ローヘッドに向かう。

幸い、雨はしばらくして弱くなってきた。


ローヘッドまでは割と近かった。
本日のキャンプ場は「Low Head Beachfront Holiday Village」。

一泊23ドルと高いが、その名の通り、道を挟んですぐ先が海で
タスマニアのキャンプ場にしては設備が整っていて快適だ。

 ニュージーランドの「Top10 Holiday park」がこんな感じだった。



テントを張り、キャンプ場のレセプションに戻り、
近くでやっているペンギンツアーの予約をお願いしにくと
キャンプ場の女性は「予約?要らないわよ。時間になったら、そのまま現地に行けばいいわ。場所は分かる?」と教えてくれた。

ニュージーランドでは宿やキャンプ場のオフィスが
各種アクティビティのあっせんをしてくれるのだが、タスマニアは少し事情が違うようだ。


あたりが暗くなる頃、再びライトハウスを目指す。
眩しい夕日があたりを照らす。




なんて美しいのだろう。



夕日に輝く草の上をタスマニア特有の強風が流れていく。
北から吹くこの風はオーストラリア本土から来るのだろうか。


ペンギンツアーのことを忘れて、しばらく草原のなかに立ち尽くした。




ペンギンツアーは道沿いの小さな小屋で、周囲が暗くなる頃、入り口が開いた。
16ドルを支払い受付をしてもらう。
「日本人?」と訊かれ、「ああ」と答えると、日本語の解説文をくれた。

もっともツアー中は暗くて読めなかったが。


ツアーの客は20人くらいだっただろうか。
ガイドがこのあたりに生息するフェアリーペンギンについて説明をしてくれた。
このあたりはフェアリーペンギンのコロニーで、産卵地になっているらしい。

それ以上は英語が聞き取れなかった。

ガイドに連れられ、波打ち際に行くと、
体長30センチほどしかないフェアリーペンギンが次々と浜に上がって、
ブッシュに入っていく。




すごい数だ。





こうやってペンギンが自然な状態で守られているのはとてもいいと思う。
ツアーのお金やツアーの小屋で売っていた土産はペンギンのための環境保全に使われるそうだ。

あれで16ドル。安いよな。
ただ、英語がイマイチ理解できなくて、そこだけ消化不良な感じだ。


キャンプ場に戻り、自分の英語力のなさを嘆きながら、ビールを飲んで眠りに落ちた。







2014年5月1日木曜日

夕暮れのBridport 2008年12月21日

Rengerwoodで道を尋ねたら、別れ際に、"Have a merry Christmas!!"と言われた。
なるほど、あと数日でクリスマスだ。
こっちはクリスマス期間はお店とか営業するのだろうか?こういう基本的なことが分からない。
まあ、なるようにしかならない。


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朝はいつもよりゆっくり起きて、出発の支度をする。
キャンプ場のキーをスーパーに返却し、デポジットの20ドルを返してもらう。
スーパーには昨日会ったオランダ人サイクリストの夫妻がいた。

昨日はブランクスホルムの手前、Derbyまで行ったらしい。
本当にすごいな。今日はScottsdaleまで行くそうだ。

スーパーの男性にハイウェイを避けて、Rengerwoodという街へ迂回するルートを回った方が激しく坂が少ないからそちらへ行くといいと教えてもらう。

オランダ人夫妻にも教えてやったが、距離が伸びるからハイウェイを行くと言っていた。


走り出すと左の膝が痛む。
道は激しくアップダウンだ。

リンガーウッドに入る。街の入り口に巨大な木のモニュメントがあった。街を進むと至るところにそうした木のモニュメントがあった。



モニュメントの下に何かの碑があるものもあり、お墓かもしれないな、と思った。

リンガーウッドは街というより集落というぐらいのところだが、教えてもらった迂回路がわからず、家の前で芝刈り機で芝を刈っていたおばさんに道を聞いた。

おばさんは「えっ?何?」と芝刈り機を止め、つけていた防音のイヤーマフとサングラスを外して応対してくれた。


すまんすまん。


芝刈り機おばさんによれば、迂回路はずっとダートロードだから、どっちもどっちじゃない?ということだった。



結局、私は近くの道からハイウェイに戻った。
まあ、木のモニュメントも見ることが出来たし、いいとしよう。

ハイウェイを少し行くと、オランダ人夫妻の姿が見えた。
近道を教えておいて、結局遠回りをしてしまい、彼らを抜き去るときなんだか恥ずかしかった。



昨日のブランクスホルムまでの道ももなかなかの坂だったが、スコッツデールまでの道は更に上をいく劇坂アップダウンだ。

 東海岸のアップダウンも「おいおい」というレベルのアップダウンだったが、このあたりは周りが開けている分、よけいに激しく見える。



お年寄りが坂の上で転んだら、どこまでも転げ落ちてしまいそうなぐらいの劇坂だ。

スコッツデールの街。坂が凄過ぎて笑える



今日は天気がいいからアップダウンにはうんざりしながらも、気持ち良く走れるが、雨だったら最悪だな、と思った。



スコッツデールの街へ続くハイウェイは前に伸びているというより、上に伸びているように見えた。


苦労の末、スコッツデール到着。
街にはスーパーマーケットのウールワースがあった。
大手スーパーなので、いろいろ安い。ガムテープとツナ缶などを買う。

お腹がすいてきたので、見つけたカフェに入る。
Cafe on kingという店だ。




ステーキサンドとMaggcinoを注文。サンド8.5ドルは少々高い。




挟んであるのはチーズ、トマト、レタス、タナネギ、ケチャップ、ステーキか。
半熟の卵と甘いケチャップがうれしい。日本に帰ったら作りたいな。
食べにくかったが、味は良かった。ただ、イマイチ満腹ではない。

サンドを食べていると、奥の席に座っていたじいさんが私のところにやってきて話しかけてきた。

「今日はどこから?」「どこへ?」

私は「Bridportまでだ」と言うと、どこからか地図を持ってきてあれこれ説明してくれた。
全くいい人がいるものである。



スコッツデールからもあきれるしかないアップダウンが続いた。





とはいえ、午前中よりは順調に進んだ。




今日の目的地、ブリッドポートに近付いた頃、「Garden Cafe」の看板を見つけ、
誘惑に負けて立ち寄った。


このガーデンカフェ、「Flying Teapot」はその名の通り、庭がとても広く綺麗だった。








店の中に入ると、なんともかわいい感じだ。


愛想のいい年配の女性が「何にする?」と聞いてきた。
私は迷わずいつもの通り「カプチーノ」と答えた。お腹がすいていたので
「何か甘いものある?」と聞くと店の女性はショーケースのチーズケーキを指差した。

いいねぇ、チーズケーキ。ニュージーランドでは本当によく食べた。

チーズケーキは大変おいしかった。ペロッと平らげる。
 



店には常連だろうか、奥に年配の女性が座っており、いつものように「どこから来たの?」と聞かれたので話す。
「今日はブランクスホルムから走ってきたよ」というと、店の女性といっしょに驚いていた。
私は簡単にこれまでの旅の話をした。


カプチーノを飲みながら日記を書いていると
カフェの向こうの芝生にプロペラ機が着陸した。



おお、なるほどFlying teapot。

プロペラ機から降りたパイロットが飛行場側の入り口からそのままカフェに入ってきた。
なんだか『紅の豚』のワンシーンのようだ。

店の女性はパイロットと話をしていて忙しそうだったので
出発することにした。

会計を済まそうとすると「お構いできないでごめんなさい。4ドルね。」と言われた。
これではチーズケーキの代金は入っていない。
チーズケーキの代金もちゃんと払うと言ったのだが、聞いてもらえなかった。
私は「ありがとう。ケーキとっても美味しかったよ。」と伝え、カフェを後にした。

旅先での善意はほんとうにうれしい。



ブリッドポート到着。ブリッドポートはタスマニア北海岸の街だ。

海沿いの街はどうしてこんなにも眩しいのだろう。

街の入り口でオシャレな建物が出迎えてくれた。街に着くと単純にうれしくなる。今日はここまで。今日も日が高いうちにテントを張ってゆっくり出来そうだ。



街の入り口のリカーストアでビールを買い、キャンプ場へ向かう。

キャンプ場は一泊20ドルと高めの値段だが、海岸のすぐ隣にあり、ランドリーやシャワーなどが充実していた。きっと家族連れなどがたくさん使うのだろう。

テントを張っていると、例のオランダ人夫婦に会った。

旦那さんは相変わらずちょっと偏屈な感じだが、奥さんは優しく話しかけてくれた。

ふたりはテントの横に座って、ワインとチーズとパンを分け合うようにして食べていた。

シンプルな食事。

ああやってずっと旅をしているのだろうか。
いや、そうやって人生をふたりで歩んできたんだろう。
「年を重ねる」ということを垣間見た気がした。


オランダ人夫妻の自転車とテント


自分のテントを張って、海岸に向かった。


キャンプ場を抜け、岩場を越えると海岸線が見えた。





なんて綺麗なとこなんだろう。


遠くにカヌーが見えた。



この海で遊ぶのは楽しいに違いない。
なるほど、この街にしばらく滞在するのも魅力的だな。
私は海に降りて、しばらく波間を漂った。



キャンプ場に戻り、いつものようにビールを飲みながら夕食を済ませた。


日が傾いてきた。


私はカメラを持って浜辺に戻った。


浜辺に至る道はすでに暗くなっていたが、浜辺に出ると空はまだうっすら明るかった。



岩場に腰を下ろし、私はただ海を眺めた。



浜辺には私しかいなかった。


空が淡いピンク色に染まり、波を浴びた砂浜はその色を優しく映した。




また素晴らしい景色に出会えた。
私はこの景色を決して忘れないだろう。

旅は続く。