2014年8月25日月曜日

旅する老夫婦 2008年12月27日

朝、テントを撤収する際に少し雨に降られたが、その後は晴天に恵まれた。

グレッグとスー、それから犬のミッチーに別れを告げ、再びダートロードを走る。

昨日ほどではないが、峠と思われるところの前後でよく上った。


ダートの道は思いの外、長く続いた。道の途中で舗装になるかと思ったが、Hwy A5、ハイランドレイクスロードにぶつかるまでダートロードだった。




朝方は冷えたので、レインジャケットを着て、レッグウォーマーをつけていたが、日差しが強くなっていたので休憩のとき、ジャケットを脱いだ。
今日は降られないといいな。


この「今日は降られないといいな」という言葉は毎日口にした。
キャンプ暮らしの身には切実な問題なのだ。


巨大な倒木のそばで休憩。補給はリンゴやビスケットがいい。

今日の目的地、Great Lakeに向かうA5に入ると、急に視界が開けた。
主要道路なのだろう、道も広く走りやすい道であったが、北から猛烈な風が吹き続けており、向かい風の中、ペダルを踏み続けた。


このあたり一帯はSt.Patoric Planesという平原らしい。道路の脇にぽつんと標識が立っていた。

平原に一本伸びるハイウェイをひたすら進む。
まさに吹きっさらしというのがふさわしい状況で、時速も10キロ程度しか出ない。
めげそうになりながらも、気持ちを奮い立たせ、平原の終わりを目指した。
タスマニアはサイクリスト泣かせの地形が多い。



セントパトリック平原では羊の牧場があった。彼はどこから出たのか柵の外にいた。


昼を過ぎた頃、ジャンクションに到着。
ちょうど大きな木が生えていて、周囲が広くなっており、休憩するのにちょうどよかった。

昼食にインスタントラーメンを作る。

ラーメンができあがる頃、私が来たのと同じ方向から、小径車に乗ったじいさんがやってきた。すごいな、小径車か。
話を聞くとリッチモンド方面から来たらしい。


「食事は?」と私が尋ねると「今、妻が来る」と言って、道の先をずっと見つめて待っていた。

しばらく待っても姿が見えないので、本当に来るのか?と訝っていると遠くにようやく奥さんの姿が見えた。

この向かい風の中、よく走るなぁ。


スピードこそゆっくりであるが、確実に近づいてくる。

奥さんも旦那さんに負けず、もう老人と言っていいような年齢に見える。
すごいな。


二人はアメリカ、ペンシルバニアから来ており、オーストラリアはタスマニアとパース~アデレードを結ぶグレートオーシャンロード、それからニュージーランドを4ヶ月かけて回るらしい。この年になって夫婦でこんなことができるなんて素晴らしい。

こんな風に年を重ねる事が出来たらいいな。



二人の小径車は「bike Friday」だった。ヘッドパーツがChris kingだったので、
「いいヘッドパーツだね」と私が言うと、
奥さんが「ヘッドチューブが長いから、強いパーツがいいのよ」と答えた。

すごい、奥さん。ちゃんと分かって使ってるんだ。
このご夫婦、本当にすごいな。

二人は簡単に食事を済ませていた。ずいぶん少ないように見えたが、あれで足りるのだろうか。

私はインスタントラーメンを食べた後、残ったスープにインスタントのマッシュポテトを投入して食べたが、これは失敗だ。不味い。

それから昨日、ロスのベーカリーで買ったキャラメルファッジを食べる。
甘すぎなくて美味しい。少し食事の量が足りない気もするが、さっきも休憩でリンゴとビスケットを食べたことだし、どのみち旅をしているときはいつも空腹だ。

小径車のご夫婦に聞くと、彼らも今日はグレートレイク泊まりらしい。
「じゃあ、またあとで」そういって、ご夫婦より先に出発した。


再びハイランドレイクスロードを北に向かう。


地図の情報によれば、この先はダートとなっていたが、実際は舗装がされていた。道の状態がいいのは救いだが、相変わらず、強い風向かい風が行く手を阻んだ。
ペダルを踏むたび、膝がきしむ。

グレートレイクのあるMienaに到着。
グレートレイクといはなんともわかりやすい名前の湖だ。確かに大きい。



少し水量が少ないのか、草木に覆われた岸から砂利が少しむき出しになっていた。


街をうろうろするが、今日の宿泊予定のグレートレイクホテルが見つからない。
同じおっさんに2回遭遇して、今度また会ったらホテルの場所を聞こうと思っていたら、3回目遭遇したときにオッサンのほうから話しかけてきてくれた。

「パブか?パブならもっと向こうだ」そういって湖の向こう側を指さした。


なんだ、全然見当違いの場所じゃないか。

どうやら、グレートレイクホテルは街から離れた場所にあるらしい。

『ロンリープラネット』をよくよく見れば、「turn off to Bronte Park」と書いてあり、私がちゃんと読んでなかっただけであった。


グレートレイクホテル、と言っても、実際はモーテルに近い。
バーでチェックインを済ませ、ついでにビールを買う。

夏のはずだが、暖炉に火が入っていた

田舎のバーはよそ者を寄せ付けない雰囲気があって、あまり好きになれない。

部屋はなかなか清潔だった。
さすが35ドルしただけのことはある。タオルが付いてきた。



少し休憩し、たまった洗濯物を片づける。
数日分の洗濯物を手洗いするのはなかなか苦労する。

洗濯物を干し終わる頃、小径車のご夫婦がやってきた。けっこう時間はかかったが、ちゃんと走って来られるものだなと思った。



夕食は前にかっておいたツナ缶でチャーハンを作る。



キッチンが使えるときは米が食べたくなる。たいてい、調理器具も食器も使える。
キャンプで自分の鍋でやってもいいが、洗うのが面倒なので、そうしている。

安くてお世話になった大手スーパーcolesのツナ缶

そろそろ朝食のパンに付けるジャムがないので、
砂糖を買ってキャラメルソースでも作ろうかと思ったが、砂糖が高かったのでやめにした。
次の大きな街はどこだろう。Queenstownか。

キッチンのテレビで「料理の鉄人」が吹き替えで流れていた。
海外で流行っていると聞いたことがあるが本当らしい。


ふと思い出して、外の電話ボックスから日本のお世話になっている自転車屋さんに電話した。
店長さんはいつもの調子で元気そうだ。注文しておいたロードのフレームが届いたらしい。
自転車乗りの友人たちによろしく伝えてもらうよう頼んだ。



明日はタスマニア有数の国定公園であり、世界遺産であるLake St.Clairに向かう。
ひさしぶりに少しハイキングをしよう。

2014年8月14日木曜日

タスマニア湖沼地帯へ 2008年12月26日


昨日はテントで横になっているうちに寝てしまった。

夕方、あたりが少し暗くなってきた頃、バーベキュースペースに人が集まっていた。




キャンプ場のオーナーがソーセージを焼いている。
私の姿を見つけるとトングを持った手を軽く上げ、私を呼んだ。



「パンやマスタードはそこにあるから、焼けたソーセージ挟んで適当にやってくれ」と
バーベキュースペースの奥をトングで示した。





実は私はこういう感じにあまり慣れていない。
空いている席に腰を下ろし、ホットドッグを頬張りながらビールをチビチビ飲んだ。

これがキャンプ場のクリスマス、というところだろう。

回ってきたビスケット

しばらくして、隣にいたじいさんと話をするが、
じいさんモゴモゴ言っていて、何を言っているのかよくわからない。

何度か聞き返すと、数日中にホバートに大きな嵐が来るらしい。

おいおい勘弁してくれよ。


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朝、ロンフォードを後にする。
ロンフォードの街から出るのに少し苦労するが、これもいつものこと。











ロンフォード郊外は麦畑が広がり、とても豊かな景色だ。


天気は雨が降りそうな曇り空だが、Rossまで快走。





途中のCambelltownとManaraで休憩し、平均速度20キロで走ることが出来た。
タスマニアに来てからこのペースは珍しい。いつも15キロも出ればいいほうである。








ロスの街は古い町並みが有名だが、日本人には他に有名な場所がある。
Ross Village Bakeryである。

何が有名かというと宮崎映画「魔女の宅急便」に出てくるパン屋のモデルになったのでは、
と言われているからだ。


実際、見てみると、
まあ、言われてみれば、そうかもしれないという感じだ。




店内に入る。

あまり広くないが、お客さんはお客さんは多く、賑わっていた。
ショーケースには美味しそうなパイやファッジが並ぶ。







私は昼食にフィッシャーマンズパイとチョコレートファッジ、ベーコンエッグパイそれにキャラメルファッジを注文した。



フィッシャーマンズパイはホタテと何か練り物のようなものが入っており、とてもおいしかった。

ベーコンエッグパイ。真ん中に卵。これもおいしかった

チョコレートファッジはココナッツとクッキーが入っていて、
タスマニアのスィーツにしてはそこまで甘くなくて、口によくあった。

ファッジというと甘すぎて、自転車で旅をしていて体力を消耗していなくては
とても食べられないほど甘いものが多いものだが、ここのはそうでもなかった。

別にキャラメルファッジを購入したが、
こちらは『ロンリープラネット』オススメ商品である。テイクアウトにした。


充実した昼食を終え、リカーストアで夜のビールを買い、ロスを後にする。


当初、ロスからは南にずっと抜けて、
最初の都市ホバート近くまで行こうかと考えていたが、
なぜかそのあたりの街にはキャンプ場がないようなので、
そこまで南下せず、西に向かうことにする。

西へ行くルートはタスマニア中部の湖沼地帯に続いている。


ロスからしばらく強い向かい風にやられるが、ジャンクションに到着。

ジャンクションからルートに入るが、
主要ハイウェイではないためか道はやがてダートになった。
これは想定内だ。

ダートといっても、かなりしっかりしたものだ。
日記の記述によれば、「ダルトンハイウェイの後半程度」とあるので、
日本の未舗装路と変わらないぐらいだろう。


しかし、その後、目の前にこれまでツーリングでは経験したことがないくらいの
激坂が立ちはだかった。


私は絶句した。


これはマウンテンバイクでトレイルを走りに行って、何とか乗って登っていけるレベルだ。

登りで足をつく、ということはほとんどないが、今回ばかりはそうはいかなかった。
頂上か、と思って止まるとまだ先がある。

そんなことが何度もあって、ようやく頂上まできた。

これはひどい。
私はこれまでそれなりに場数を踏んできたが、これは最大級の峠だ。
タスマニアの峠はどこも急峻だが、まさにこれはその最たるものだろう。





ひどい峠の後は、下るわけでもなく、道はフラットになった。
のぼりが終わってほっとした。

疲れた。当たり前だ。
早くテントを張って寝たい。




セルフタイマーがうまく使えずちゃんと取れなかった。3テイク目。

しばらく走りInterlakenに到着。
「Interlaken」と看板があり、街というほどでもなく集落があるだけ。
キャンプ場があると『ロンリープラネット』と書いてある。
今日はここで宿泊の予定。


一か所車が多く停まっている場所があったが、そこはキャンプ場ではなかった。
何かの集会場だろうか。
こんな辺境で車が多すぎる。怪しすぎて近寄れなかった。



道の周囲に木々が深く茂っており、夕方にしては暗く感じた。


少し迷ったが、キャンプ場を見つけた。
キャンプ場には先客のキャンピングカーが一台。




キャンピングカーのそばにいた男性が、水場とトイレを教えてくれた。

自分のテントを張っていると、先ほどの男性が、お湯の入った鍋を一つ持ってきてくれた。

「これ使うといいよ」

男性はグレッグといい、奥さんとキャンプしながら旅行しているそうだ。

私は礼を言うと、もらったお湯で体を拭いた。

最後に残ったお湯を背中にかけた。
疲れてはいたが、湖畔のキャンプ場で服を脱いで湯を浴びるのは爽快だった。









夕食は日本から持ってきたタラコスパゲッティのソースでパスタを作る。
食事をしながら、明日のドリンク用にお茶を沸かす。

そして『ロンリープラネット』の地図を何度も見て、明日の予定を考える。
旅の日常だ。


ふと思い出し、自転車のサイクルコンピューターを見ると、
今日の走行距離は116.5キロになっていた。

午前中は調子よかったとはいえ、よくやった一日だったな。


今は夏のはずだが、少し肌寒い。
グレッグに頼んで火に当たらせてもらう。


左の鍋のお湯をもらった
焚火に当たりながら、ビールをあける。
焚火の前で飲むビールはなぜこんなにうまいのだろう。

グレッグと奥さんのスーと話す。




二人はタスマニア北部、ビューティーポイントに住んでいるそうだ。


グレッグたちの愛犬ミッチー。愛想のいい愛くるしい犬であった。

私はビューティーポイントの近くを通ったのでバッドマンブリッジを通ったことなどを話した。
途中でタスマニアの鉄道の話になったが、タスマニア在住の人からしても
鉄道が貨物だけで旅客がないのはおかしいことらしい。
ちょっと安心した。

スーが手作りのパウンドケーキをくれた。
フルーツがふんだんに使ってあってとてもおいしい。

3人でしばらく話した。
夫妻は昨日もここに滞在しており、きのうは中国人の若者たちが車で来て、
夜、ウォンバットに興奮していたらしい。

ウォンバット。Web上から転載


夜、物音がして起きたがウォンバットの姿は見えなかった。。

焚火を囲んで話している時間。

旅をしているとこういう時間を過ごす機会に恵まれるが、
本当に何物にも代えがたい時間だと思う。